わたしのために泣いてくれて―――ありがとう。
SORAHANEの「はるかかなた」の感想、ご紹介です。
- タイトル:はるかかなた
- ブランド:SORAHANE
- 原画:秋月つかさ / 腹ペ娘
- SD原画:鈴音ことら
- シナリオ:ポチくん / 砥石大樹 / ウラキタカチホ / 海水塩湖(サブ) / 昼王(サブ) / 桜野伊吹(サブ) / 相澤一二三(サブ)
- ジャンル:エモーションノベル
- 発売日:2014年5月30日
はるかかなた 感想
あらすじ
突然出会った妹と――キスをした。
「もしかしてこれ……きす?」
その少女は、そう言いながら"未来リスト"と名付けられた手帳に「○」をつけた。
そこには「キス」「家族に会う」「ネギトロお腹いっぱい」と書かれていた。「いまの……きすじゃない?」
誤解なく言えば、あれはキスではなく人工呼吸。
展望台で倒れていた彼女を助けるためのとっさの行動――の、はずだったのに。「お兄ちゃん、お帰り――って、どしたの? 疲れてるように見えるけど……」
俺と妹の"結衣"は、小さな頃から二人で過ごしていた。
里親であるシスターの"朝陽"さんは、結衣のために今日は赤飯を用意していた。
恥ずかしがる結衣を尻目に、俺は結衣の成長を感じることができて、少し嬉しかった。あの少女が気掛かりで展望台に戻ったら、そこには違う女の子がいた。
一生懸命に、一人で凧揚げをしながら。
全然飛ばないその凧揚げを手伝うと、女の子は無邪気に喜んだ。「あたしは"心音"っていいます。 今日からあなたのことを、敬意を込めて……先輩って呼んでいいですか?」
「あっ、かなたちゃん…… ありがとっ!」
街中で偶然会った幼なじみの"雫"の荷物を受け取って、少しだけ足を速めた。
今日も喫茶シトランテからもらった食材と、内職で仕上げた荷物を両手にいっぱいに抱えて。
小走りで肩を並べた雫の位置は、前でも後ろでもなくて、いつもどおり隣に半歩…… それが俺たちの距離だった。「……また会った」
家に戻ると、そこには朝に展望台で出会った少女が立っていた。
少女の名前は"はるか"。
はるかは、俺(かなた) と同じ目、同じ髪、同じ雰囲気、そして俺が父親からもらった形見と同じ「青い羽」を持つ少女。
それもそのはず…… はるかとかなたは双子の兄妹なんだから。それが、はるかとかなたの……ちょっぴり不思議で、ちょっぴり切ない、恋物語のはじまりだった。
わたしのために泣いてくれて―――ありがとう。
公式サイトより引用
『はるかかなた』OP Movie
ネタバレ無し感想
※あらすじや体験版などで公開されている範囲はネタバレでないという認識です※
もう完全に意味深だけど、主人公の名前がかなた、
メインヒロインの名前がはるかって時点でアレよね。
ベタだけど、興味そそられる。
簡単に言えばヒロインズは幼馴染、義妹、
双子の妹、その幼馴染というコンボ。
しかもヒロインズは紆余曲折あって
序盤は全員一つ屋根の下。中々、中々です。
もちろん関係性はそれだけじゃないんだけど、
それはネタバレになってしまうので。
シナリオ的にはメインは妹系になるけど、
大きく括れば家族・友情といったものもテーマになっている。
そこにSF的な要素は無く、リアル寄りな世界、
しかも複雑な人間関係のある世界にメーカー色である「死生観」が絡むので…
あとは分かるね?って感じです。
ちょっと重い感じのシナリオが好きな
プレイヤー向けの作品ではあると思う。
ちなみに、システム設計が最悪。
発売当時は目も当てられない状況だったとか。
今現在の環境下でもフリーズはあった程。
フルスクリーンやめたらフリーズはなくなったけど、
不安定な印象はある。
音周りもちょっと不親切。
アイキャッチの演出、凄く良いのに
音が安定しなかったのは本当もったいない。
CGについて
背景に力を入れているのが分かる。
とても良い感じ。
キャラクターも割りと表情豊か。
ただ、構図のおかしい絵がちらほらと…。
BGMについて
前2作に続き、アコースティックな感じは残しつつ、
ちょっと違う感じに仕上がってるかと。
ボーカル曲は総じて良い雰囲気。
システムについて
セーブデータにチャプターと
進行度が出るので、それは便利だと思う。
それ以外は色々と残念な出来だった。
特に音周りのバランス。
過去作のシステム流用じゃダメだったのか…?
- ある程度の長尺シナリオで、儚さもある作品が好き。
- ファンタジーより現実的な作品が好き。
- 演出が良いゲームを探している。
以下、ネタバレあり。
ネタバレあり感想
共通の、急に登場した瀕死の小鳥。
その存在にことごとく感情移入し、
小鳥が死んでしまって異様に悲しがる皆さん。
ここの辺りがちょっと悲壮感漂い過ぎてて、
いや無理あるでしょ…とも思ったり。
はるかルートでだけ小鳥に「ヒスイ」と名付けたけど、
特に意味も無かったので余計に「?」となった。
シナリオの魅せ方は義妹>実妹になった印象。
はるかは死が絡むから、倫理観と死生観がごっちゃになってしまった。
そこがちょっと残念だった感じもする。
以下、個別。
七海 結衣(CV:秋野花)
義妹。大人しめな性格。
個性という面ではヒロインズの中で埋もれるかも。
ただ、好感度は最初から振り切ってる為か、ルートに入ると積極的なご様子。
義妹というのが判明したのが作中時間で作品始まって以降だから
ショッキングな部分もあるのだなとは思える。
義理の兄妹が結ばれた夫婦である、主人公と結衣の両親との比較。
そして葛藤。
当たり前の部分ではあるんだけど、
この葛藤が結構深く、しつこく描かれてるんだよね。
気持ちの動きをしっかり描いてくれたのは好印象。
はるか退場後、結衣の実父を名乗る男が娘を引き取ると。
初登場から髪色と瞳の色同じだったからね、分かりやすかったね。
しかし、この悠真と言うキャラ、小者過ぎて言ってることも支離滅裂…
なんなんお前?って感じにしか思えなかったのが残念。
ただ、周りの事情を知らない人の何となくな、何でもない言葉が
主人公と結衣を傷つけていく様は中々に良かった。
最終的にハッピーエンドだったけど、
エンドロールへの入りについてはちょっとアレだった。
父親の死と対になる表現をしたかったのだろうけど、
ルートヒロインの事故血まみれはいただけない。
そういうのは求めてなかった。
悠真がもっと別の事情を抱えていて、
主人公の両親のこと、周りの関係ももっと深く言及して
それを上手く使えたなら良シナリオに昇華できたと思う。
ただ、実妹であるはるかの場合と比べると、
圧倒的に葛藤や世間体の表現が多かった印象。
そこは凄く良かった。
泉 雫(CV:藤森ゆき奈)
幼馴染。
お母さん想いな良い子やなぁ…
それ以外でもめちゃくちゃ良い子。
本作においては一番癖がなく可愛いのでは。
主人公のことを「ちゃん」呼び。
それだけで幼馴染感が凄い。
誰かと居る時はかなた「くん」呼びに変化してた。
そういう些細な変化って何か良いよね。
結衣の、主人公を諦めた描写があったのは良かった。
恋人になる流れも幼馴染しつつも、何か温かい感じで良かった。
雫の幸福論なんてものを語った後で、それを嘲笑うかのような渚さんの死。
アテナも何処かに消えた。
この辺りの雫の絶望感というか、そういうのは結構うまく描かれてたと思う。
レ目良かったし。w
その状況でHなことをし出すのは引いたけど、
作中でも雫もさすがにその行動について言及してたので、まぁ許容した。
からの、やっぱりアテナも死ぬ、雫も死に向かう。
ここら辺はもう誰でも分るくらいに単純な流れだけど
見事なまでに不幸を連ねてくれた姿勢に感謝。
ただ、アテナの死は必要だったのか分からない。
死のバーゲンセール状態。
終盤の雫が川に落ちてからの流れは陳腐。
最後の駆け落ち再びのシーンが良かったので、
そこに繋がる重要なシーンだっただけに残念だった。
白羽 心音(CV:英みらい)
うるさい、明るい。
癖があるけど、過去に何かありそうな子。
闇を抱えてても、基本的に明るくて可愛い。
最初は心音は主人公のことを兄みたいと慕うから、
なんだかんだここでも兄妹みたいな雰囲気は感じる。
ところで、マグロが「すぐそこの海で獲れる」とは、
一体この世界の住人はどこに住んでいるのか…
心音父の交際反対の理由は初期は
ちょっと内容が薄すぎ、且つ強引で逆にびっくりした。
シナリオ上、心音の再家出につなげたかったんだろうけど。
更にその後、
心音父が凄い良い人(実際に良い人なんだけど)風に
描かれるもんだから、違和感が凄い。
で、心音はと言うと…
過去の事故の後遺症で右手がほとんど動かない、と。
その為にシトランテで料理を振舞う夢も捨てざるを得ない、と。
まーた重い設定ぶっこんできたよね。
心音には何でも話してほしい、自分を信じて欲しいとか言いつつ、
主人公くんはすぐに秘密を作る。
それは流れ的によろしくなかった。
主人公からの言葉として「ずっと一緒にいよう」とか
「信じてくれ」とかそういう言葉が多いのに、
いざという時には心音だけ生かそうとしたり、
ちょっと気持ちの矛盾が多い。
最後の青く光る海のシーンもシーン的には綺麗なんだけど、
話のもっていき方に無理があって何だかなぁという感じ。
何か良く分からない内にちょっと良い話をされて、
いつのまにかハッピーエンドになった感じ。
エピローグには結構気合い入れた感じを受けた。
綺麗にまとまったし、一番最後だけ名前呼びがあったので良かった。
ずっと主人公のことを「先輩」呼びしてたのは
さすがに違和感あったからね。
気になる点としては、
何かがあった時にヒロインの
トラウマスイッチが入るのは分かるんだけど
その発動条件があまりに適当で
情緒不安定にしか見えなかったのは残念だった。
おしっこちゃん、貧乳としては高評価します。
水城 はるか(CV:北見六花)
実妹。マイペースな感じ。
スローな喋りで可愛い。
月ヶ浜に住んでたってことで、
メーカー処女作AQUAの舞台と一緒。
ちょいちょいAQUAの背景入れ込んでくる。
デジタル表現は無いから例え同じ世界だとしても、年代はかなり違いそう。
他ルートでは夏休み中に離脱して戻ってこないから
ただの不思議系キャラと化してしまっている。
まぁ、それが面白くもあるんだけどね。
過去作のネタを、過去作やった人だけ
ニヤリとする程度に入れてくれるのは良いね。
やってない人は読み飛ばす程度の事だし。
主人公とはるかの関係の変化について、
朝陽さんの物分かりが良すぎてちょっと怖い。
まぁ朝陽さんは色々と知ってるからってのもあるんだろうけど。
良き相談役としてはちょっと程度が過ぎてる気がする。
この人がいるから、あまり重く感じないんだよね。
そりゃ、葛藤とかそういうものは描かれるけど…
むしろ義妹の結衣の方が重かった気がするのがマイナスポイント。
主人公とはるかが恋人になったことに対する
他ヒロインや悪友の対応も結衣ルートより和やかで。
ちょっと意味分かんなかった。
まぁ、このルートでは死生観が絡むから
倫理観は抑えめにしたのかもしれないけど。
はるかとの駆け落ちについても、
主人公は簡単に決断してしまった印象があって。
直前がはるかと主人公が恋仲になったって、
周りの友情は変わらないって温かいシーンだったのに。
で、いつの間にか話が倫理観の話から
はるかの難病の話にすり替わってる。
はるかが死んでENDはビターな印象を受けるけど、
グランドエンドを見た後はちょっと軽い印象を受けた。
グランドルートにおいては
はるかが妊娠したこともあってか
倫理観の話と難病の話はほぼ同時進行する。
それは良かったと思う。
ただ、一番大切な臓器移植の話のくだりが
割りと駆け足で終わってしまったのが残念。
はるかの出産や、主人公の回復の経緯が
まったく語られなかったのが残念。
仮に、はるかが助かって主人公が死んだ世界線だったなら、
個人的にはもっと評価できたかも。
リアルな世界を描いた以上、
ご都合主義は排除しても良かったかもって。
はるかかなた 感想 総評
★3寄りの★2で。
兄妹関係や、複雑な人間関係にフォーカスを当てた作品。
メーカー過去作とは毛色を変えて、
でもメーカー色でもある「死生観」を取り入れた意欲作だったと思う。
色々とシナリオの粗は目立つけど、
それでも違う色を出してきた点を評価したい。
システム的な部分での不具合が無ければ、
もうちょっと評価されても良い作品だったかも。
SORAHANEというブランド名義の遺作(になるであろう)としては
ちょっと残念だった印象。
以上、はるかかなたの感想でした!
挿入画像 FANZA GAMES / 公式 より引用
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