刹那で永遠なこの世界で彼女たちは――大切な何かを見つける
ぱじゃまソフトの「夏の終わりのニルヴァーナ」の感想、ご紹介です。
- タイトル:夏の終わりのニルヴァーナ
- ブランド:ぱじゃまソフト
- 原画:大野哲也
- シナリオ:亜麻矢幹
- ジャンル:大切な何かを見つけるADV
- 発売日:2013年1月25日
夏の終わりのニルヴァーナ 感想
あらすじ
――記憶を失った、4人の少女たち。
彼女たちの抱えた罪を裁くため、主人公カルマは耶麻代学院に送り込まれる。期待と不安で揺れ動く彼を迎えたのは、
死にたがりの少女、ミハヤ。
産まれし罪を背負う少女、ナユ。
セカイを拒絶した少女、レイア。
愛する人を救えなかった者、ノノ。
彼女たちと過ごす、平穏で心地よくも、どこか儚い、仮初めの学園生活……。
それは、魂に秘密を抱える少女たちに与えられた、最後のモラトリアムであり、
同時に、カルマにとっての試練の時でもあった。カルマを見守る幼馴染みの少女、クオンと共に、彼は自らの使命に従い立ち上がる。
罪を背負った魂は、輪廻に還るのか。それとも、地獄へと堕ちるのか……。
そして、カルマが彼女たちの裁きを任された、本当の理由とは……?全てはカルマ自身の裁定に委ねられていた。
公式サイトより引用
夏の終わりのニルヴァーナ オープニングムービー
ネタバレ無し感想
※あらすじや体験版などで公開されている範囲はネタバレでないという認識です※
シナリオは章仕立てで進行。
再序盤から良い意味でシナリオやばい匂いがぷんぷんする。
世界観は一言で言えば死の先にある世界と言えば良いかな。
内容的には個別が全て泣かせに来てる泣きゲー。
シナリオゲー・泣きゲーが好きな方には
是非とも読んで欲しい作品かな。
良い意味でどのルートが心に響くかは人によって違うと思う。
『この作品でなければ味わえないもの』はきちんとある作品。
惜しむらくは共通の出来があまり良くない点。
サブキャラ、特に和尚と奪衣婆は良い味出してる。
千手含めてこの3人は最後まで活かされるので、それは良い点。
ちょっと解像度が低い(1024 x 576)作品なので、
そこは気になる部分かもしれない。
CGについて
立ち絵は目パチあり。
もちろん可愛い子もいるが、
髪型がデザイン的にヤバい子(主人公含め)が居たり、
体型の不自然さがあったり…
年代の流行りにもよるんだろうけど、特に立ち絵は目立つ。
背景は綺麗。
さりげに河原などにエフェクト的な光がさしてたり、芸が細かい。
SD絵はみんな可愛いよ。
BGMについて
はっきりした音粒のBGM多し。
ただしどこかで聞いた事のあるアレンジBGM多め。
システムについて
バックログが「巻き戻し」となってるので、
ちょっと「ん?」ってなるけどその程度。
その他は特に不自由無し。
- 何か良い泣きゲーない?と思ってる方。
- 舞台設定がきちっとしたファンタジー作品が好き。
- 主人公に特徴があるゲームが好き。
以下、軽微なネタバレあり。
ネタバレあり感想
共通終わりから、やっと本番。
実はみんな、現実世界で完全に死んだわけではないという。
共通がつまらないまでは言わないけど、退屈ではあった。
以下、個別攻略順。
推奨順は特に無いと思った。
橘 美羽夜(CV:夏野こおり)
死にたがりヒロイン。
寿司を熱く語る美羽夜の意味不明なキャラも面白い。
が、過去が絡んでたとはね。
ウソシリーズじゃないんだけど、
この作品の主人公も嘘を見破れる能力があるから、
そういう演出もあって中々面白いんだよね。
途中、ノノ・イヤーが中途半端に
主人公と美羽夜の会話拾うもんだから、
アンジャッシュ感が面白かった。
誕生日が両親が逝去した日と同じという悲しい子。
こういったシナリオでは周りが良かれと思ってしたことが
ヒロインのトラウマを呼び覚ますのは、ままあることで。
このシナリオもそういった切り口で、
ヒロインの過去を暴いていく構成。
母、父、義母と連なる愛情に気付いた美羽夜には泣いた。
慟哭の演技も良いね。
そして、そんな美羽夜を
きっと心のどこかでは好きになりつつも、
しっかりと裁きを下した主人公も良かった。
最初にやったからか、このシナリオのみ泣いた。
シナリオに集中させる為か、
本編では久遠以外はHシーンは無し。
そういう構成久々だけど、私は好きです。
如月 那由(CV:不破弥莉亜)
変顔になりきれてない変顔と明るい性格が可愛かった。
花火戦争のくだりはちょいちょい笑わせてもらった。
現実的に考えるとあり得ない危険なことなんだけどね。w
特に、飛び降りて木っ端微塵になったあとで
やっと復活した美羽夜に花火が直撃した描写が面白かった。
ちゃんと作品の設定を活かして
キャラを弄ってるっていうのが良い。
更に続く明るい展開で、カバディのくだりも笑った。
タイムもリアル設定だったし声優さん頑張ったねw
こういう遊び心のあるイベントっていいね。
このシナリオ、ひたすら那由が遊びの中心になって騒がしい。
と思ってたら、過去が少し明らかになった時点で、
那由はサイコパスへ。
この辺ちょっと急展開過ぎた感はある。
ただ、他のシナリオとは違う切り口で
死生観を語ったのは良かったかな。
プロローグでそういう場面はあったけど、
改めて音楽室で美羽夜と玲亜と出会ってたのも良い描写。
風船とコスモスの種の描写も然り。
実は現実世界で間接的にヒロイン同士が
関わっていたというシナリオ構成が良いね。
久遠ルートまでやると、
それどころじゃない関係性だったのだけど。
結局、那由自身が最終的には短く終わる生を選んだこのシナリオは
遊びもあってそこまで泣けるようなシナリオではなかったけど、
部類としては間違いなく泣きの部類に入るシナリオだった。
九条院 玲亜(CV:三代眞子)、ノノ(CV:桐谷華)
ここまでの展開で、ノノは玲亜の飼い犬だったと予想できるけど、
それがミスリードかどうかで
シナリオの評価は変わるかなと思いつつ読んだ。
結果、ミスリードでも何でもなく、純然たる犬だった。w
しっかし、ノノがいちいち可愛いなぁと。
動物的な振る舞いの演技にCV:桐谷華が良い感じにマッチしてる。
玲亜は髪型がおかしいのがちょっとなぁ…SDだと可愛いのに。
今更だけど、共通終わりの久遠の
「親しくなれば、辛くなる」
という言葉がシナリオの全体像なんだなぁと。
このシナリオでは、
特に主人公の自分自身の力不足を嘆く描写が多いように感じた。
普段は自信満々だし、
他のルートでは見れないような側面が描かれていて良かった。
他の子と違って、ノノは此岸での死が確定してるところが
このシナリオのポイントだったかなって。
ただ、このシナリオも泣かせに来てるのだけど、いまいち泣けなかった印象。
泣きに関して言えば何かが足りない、そんなシナリオ。
久遠(CV:小鳥居夕花)
この子だけは天人であり、
1200年の付き合いがあるということで。
最終ルートになるんだなとは思ってた。
そして、髪型やばい内のひとりだけど、一枚絵だと割りと可愛いのが謎。
ちゃんと前髪全部描いてあげれば良かったのに…。
序盤で既に他ヒロインは問題解決したとして
退場してるのは潔い展開だと思った。
ここでの主題は主人公と久遠の関係性、封印された過去。
と言うか公式の「1200年の業」はネタバレ注意書いてあるけど、
ネタバレもいいとこだと思う。
で、その過去編。
途中までは穏やかでいい話だったけど、終盤はね…結構凄惨。
寧子なんて首ぽーんしてたしなぁ…悲しいね。
この辺の叫びとか慟哭とか、演技が凄いね。
この話を経て、主人公自身も罪、業を背負ってたという設定も良き。
全ては偶然じゃなく、必然だった。
シナリオとしては、よくまとまってると思う。
結末については、そう来たか、と。
何と言うか…
久遠が紛れもないメインヒロインだという印象を更に強くさせたと言うか。
ご都合主義に走らなかった結果、そうするしかなかった感じも受けたけど。
全ての縁を断ち切って久遠を選んで、その上世界からも受け入れられるなんて、
この作品ではあってはならない展開だと思うし。
で、この作品における「ニルヴァーナ」という言葉は、
精神論は無視して言葉通りの「輪廻転生を超えた先」ということで良いのかな。
千手の「涅槃(ニルヴァーナ)の先に向かうことはできぬ」という言葉通りならば、
主人公と久遠は外れた世界で一緒に居れるけど、その先は無いってことで。
それだけに、アフターでの含み(久遠の意識はその後、覚醒したのか?)を
持たせる終わり方は、ちょっとモヤっとした。
それ以外は割りと完璧な泣き要素のあるシナリオゲーだったかな。
夏の終わりのニルヴァーナ 感想 総評
希望はあるのだけど、全体的に寂しい物語だった。
公式に「1200年の業」という項目があるのだけど、
これからプレイする予定があるなら見ない方が楽しめるかな。
名作まではいかないけど、埋もれてしまった良作感はある作品。
旧作でも純粋なシナリオゲーをお探しの方には候補に入れて欲しい作品。
刺さる人には刺さると思う。
以上、夏の終わりのニルヴァーナの感想でした!
挿入画像 FANZA GAMES より引用
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