本当に世界が終わるなんて、誰も信じちゃいなかった。
コットンソフトの「終わる世界とバースデイ」の感想、ご紹介です。
- タイトル:終わる世界とバースデイ
- ブランド:コットンソフト
- 原画:司ゆうき
- シナリオ:海富一 / 狩野伊太朗 / 御導はるか / 片岡とも / 池波智香
- ジャンル:新・終末系恋愛ADV
- 発売日:2012年7月27日
終わる世界とバースデイ 感想
あらすじ
2012.9.29 世界が終わる――
夏も終わりを告げようとする9月。
その噂は主にインターネットを通じて、
世界中でまことしやかにささやかれていた。もちろん、そんな噂を鵜呑みにしている人間はほとんどいない。
しかし信じずとも、
密かに不安と期待を抱いている人間は大勢いた。「その日に何かが起こるのではないか」という、
漠然とした不安と期待を。主人公は、そんな噂には一切興味のない方だった。
彼にとって大事なのは、死んだ親友の妹を守ることだけ…彼のことを死んだ兄だと思い込んでいる、かりそめの妹を。
だが予備校で知り合った同級生に相談され、
なりゆきで「9.29対策協議会」という
非公式サークルを作ることになる。そのサークルの目的は、
今ネットで話題の"世界が終わる"という噂が真実か否か、
みんなで検討して対策を練ろうというものだった。2012年9月29日まで、あと*日。
その日は死んだ親友の命日であり、
公式サイトより引用
"妹"の誕生日でもあった――
「終わる世界とバースデイ」 OPムービー
ネタバレ無し感想
※あらすじや体験版などで公開されている範囲はネタバレでないという認識です※
最初から既にクライマックス。
避けようの無い終末をまず提示し過去に戻る構成は、
単純な演出だけどテーマがテーマなだけに威力絶大。
シナリオはあらすじ通り
「2012. 9.29 世界が終わる」という事実を軸に進むんだけど、
メインキャラを軸に結成された
「9.29対策協議会」は割りと愉快な集まり。
日常が面白いかと言われればそこまでではないのだけど、
キャラの個性や相関などが大事にされた良いシナリオだったように思う。
中にはとんでもない魅力を放つサブキャラも居たり。
作品特有のSNS(texi)の投稿が
ちらちら左上に表示されるのは意外と面白い。
リアルタイムでその場に居ない他のキャラが何を考えてるか、
何をしてるのか分かるので、興味深い。
こういうシステムはもっとあっても良いんじゃないかなと思う。
一応、凄惨な表現や凌辱もあったりするので、
あくまでもノーマルな感じが好きな方にはおすすめは出来ない。
CGについて
安定しないなぁと。
可愛いは可愛いし、綺麗は綺麗なんだけど。
BGMについて
場に合ったBGM。
雰囲気出てる。
ここぞという時の音楽的な演出は◎。
システムについて
フローチャートは見やすかった。
時代もあるんだろうけど、それ以外はちょっと不便。
※通常プレイに支障が出るレベルではない。
- 舞台設定がきちっとしたSF作品が好き。
- 良い感じのギミックがある作品が好き。
- 何か謎が隠されてそうなシナリオが好き。
以下、ネタバレあり。
ネタバレあり感想
良くも悪くも「やりたい放題できる設定を内包した作品」。
終末ものと見せかけて、
その実SFループものだったのは良い感じだった。
何処かで見た設定と言えばそうなのだけど、
この作品の場合は「2重の疑似現実」があったのが良かった。
目覚めたと思ったら、実はまだ「疑似現実」の中だったというね。
個別は素直な順番でやりました。
最終的に個別ルート共通の感想は
「これは何週目の出来事なんだろう?」だった。
以下、攻略順。
千ヶ崎 入莉(CV:みる)
Cassandra Syndrome。
入莉は序盤から相当の闇を抱えてるな。。。
BAD行くと死亡するし、
兄を亡くした後は主人公を兄と思い込んでるし、中々の重さ。
予言の事件で親友と呼べるような美咲は重傷を負って入院、面会謝絶。
しかも幼少期、父親から性的暴行を受け、
トラウマを負うというおまけ付き。
結局、予言に翻弄されて、
でも最後には9.29対策協議会の友情に助けられた。
何も解決しない、そんなルート。
ただ、二人のトウヤ(冬谷と陶也)と、
入莉との間の葛藤は凄く見て取れた。
カサンドラの出現と、
陶也のお墓が実は入莉の物だったという謎。
これは最後までやればある程度は分かるけど、
この時点では謎過ぎた。
明確な世界の終わりの様相が提示されないのは、
入莉自体が人工意識体だからだろうか。
それとも、現時点では自らお墓で真実を語り、
疑似世界を終わらせたいということが望みだったのだろうか。
あ、でもこの時点では
入莉は自身が人工意識体というのは気付いていないはず…
やはりこの周回時点ではカサンドラの防衛本能のようなもの…?
夏越 大天使(CV:森谷実園)
Genocide Virus。
とりあえず可愛い。w
共通の柊とガミガミ仲良くやりあうのもほっこりするね。
~言うなー!とか、~するなー!とかの「なー!」の口癖が可愛い。
うめえ棒フリークっていうのも個性的で◎。
過去に唯一の友達と喧嘩したままその友達を事故で失い、
今回はせっかく友達になれた柊に「発症した自分を殺せ」と言われ、
すったもんだのヒロインちゃんだなぁと。
ひとつの予言が外れたことにより、
世界は終わらないと信じる主人公たち。
が、遠く離れた東欧の地で1日ずれて事件は起こっていた。
その後も同時多発的に同様の事件が発生。
集団ヒステリーと憶測するが、ついに日本でも発症者が。
と言うのは良いんだけど、
確か作中の横浜で発症者が出たのだっけ。
あれ?てんくうタウン以外は舞台が無い設定だったような…?
ウィルスの根本的な原因は明確にされないまま、
発症した主人公とミカで身投げで終了。
まぁミカの中にあった何かが根本的な原因て説もあったけど、
詳細は語られないので分からない。
市外に逃げた成子と入莉がどうなったのかも不明。
あれ?てんくうタウン以外は舞台が無い設定だったような…?
まぁ身投げして世界を終わらせるということも
一種の終末の果てなのかな。
ミカ凌辱エンドは耐性無い方には胸糞だったかと…。
これも終盤までいけば、
実は陶也の差し金だったのかなと思ってしまう。
藤白 柊(CV:桐谷華)
Glacial Period。
ラノベオタクで、
何処かで聞いたような作品のネタを結構ブッ込んでくる。
ニヤリとした悪い顔が可愛い。
普段はクール系なのに><な表情もするのがギャップがあって良い。
私服がパンツなのもキャラが出てていいね。
対策協議会の活動の一環で山にキャンプに行くことに。
ここでみられる面々の仲良さそうな一面は
結構良い感じにほっこりする。
Glacial Periodというサブタイ。
これは柊と父親の冷え切った関係の比喩かな?
4万人の凍死者が出るって凄い予言。
そして凍りだす街。理不尽。奇怪。
何も分からず、ただただ世界は凍って終了。
世界の終わりは美しいと、そう描写された事は印象的。
ところで柊父はBOTだったのに、
何故最後は自分の意志があるかのような振る舞いをしたのか。
これもプログラムだとしたら何か悲しいね。
特別製だったとしても。
後に判明することだけど、
世界の終わりは各々のヒロインに基づいたイメージで。
ということで、やはり父娘の冷え切った関係を比喩したのかな。
諏訪 成子(CV:青山ゆかり)
Reverse End。
何故この子がReverse Endのヒロインなのか、
最初は理解できなかった。
ただ、2012年の疑似現実から2022年への疑似現実への
橋渡しのヒロインだったんだなって。
主人公が目覚めると何故か研究室。
今までの世界は全て疑似現実だったというオチ。
薄々思ってたけど、
はっきりと提示されるとそれなりに思うところはあった。
この辺りから一気に裏の設定というか、
真の世界が明かされていって面白かった。
2重の疑似現実の流れにはさすがにやられた。
このルートの最後、エンドロールへの入り方がとても良かった。
ここまで来ると2012年のだらだらした成子の印象は薄れて、
きちんとヒロインしてる。
郁生との関係性を掘り下げてくれたのも良かった。
Happy Birthday
ここで初めてタイムカプセルの手紙やカサンドラ、
死んだはずの陶也が絡み、
主人公はリセットされた世界でループを思い出す。
終盤の陶也の慟哭は凄いね。凄い雰囲気。
こういう、男性の声優が良い演技聞かせてくれる作品は良いね。
シナリオ序盤の後藤が入莉を襲った時の狂った演技も良かったし。
エピローグのHAPPY B"A"RTHDAYの綴りミスが泣ける。良い話だ…。
特に感動はしなかったけど、良い〆だったと思う。
主人公は親友も入莉も失って幸せとは言えないような状態に見えるけど、
それでも「未来に向けて頑張った」結果の現実だったのだろうし。
その「現実」に「イリ」がHAPPY B"A"RTHDAYを届けた最後は綺麗だった。
織塚 美咲(CV:夏野こおり)
I Am Legendと、After 17th。
最高だった。
敢えて最後にこのお話を。
こいつはサブか?キャラ濃くない?w
この子ひたすらラーメン食ってる気もするがwと、
最初は思っていた。
ずっとお気楽だったのに、
Cassandra Syndromeでは何故か吹っ飛んできた窓枠に潰されて病院送りに。
※この後、病院での選択肢で美咲を選ぶことが正解だったのは、
ライターのせめてもの愛情だったのかなと勝手に推測。
Genocide Virusでは公園で刺されて死亡。
Glacial Periodではきっと何処かで凍り付いて人知れず死亡。
入莉を守り続け、とても可哀相な役どころを一手に引き受けてきたけど、
I Am Legendでは主人公が一番初めに、そして唯一再会する相手。
美咲にしてみれば滅びた後のリセットまで僅かな時間しか無いバグの世界でしか
思うままに主人公との交流が出来ない切ない運命。
少なくとも、主人公はこのバグの世界に17回は訪れているので、
実際はループを何週繰り返したのか、
美咲の記憶はどのくらい蓄積されていたのか…
考えると切ないよね。
入莉と同じ人工意識体で、しかも入莉のプロトタイプ。
なので、最初から主人公に対する好感度MAXというのは納得。
After 17thで明かされた、美咲の気持ちと滅びた後の世界の仕様。
この「仕様」とか「システム」とか、それで片付いちゃうのが
この作品の各シナリオの整合性を保つ為の良いとこでもあり、
微妙なところでもある。
それでも、この美咲の立ち位置に関しては
入莉のそれより個人的には思う部分があり。
とても魅力的なサブキャラだったなと思った次第であります。
終わる世界とバースデイ 感想 総評
終末ものだけど、それだけに終始しない本作。
キャラデザの好みとかあるかもしれないけど、総合的に見ればとてもよく出来た作品です。
OP、EDの楽曲も世界観があって良いし、尺も個人的には長すぎず短すぎずで良かった。
この手の「終末」ものをあまり読まない方にこそ、おすすめしたい作品。
以上、終わる世界とバースデイの感想でした!
挿入画像 FANZA GAMES / 公式より引用
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